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2022年6月8日

人材から人財への道のり::VOL 55::自己評価でお給料を決める

弊社にはこんな社員がいます。彼は仕事が面白いと感じられず、何度かチームリーダーに退職したいと相談していたそうです。入社間もない子なので、チームリーダーもいろいろキャリアに関してアドバイスして、結果的に退職せずに頑張ってもらっています。しばらく経ったある日、チームリーダーから、例の社員が給料を上げてほしいと言ってきていますよ、と。私は「仕事が面白くなくて退職するぐらいなら、給料を上げてでも仕事をしてもらった方が断然良く、検討するので提案して欲しい」と返事をしました。

それから、数日後に提案資料が送られてきました。洗練されたものではなく、学生が作るようなレポートですが、内容はそれなりに筋が通っています。

  • 自分の担当する業務は社内の別の部署と比較して随分ストレスが高いので、同じ給料はおかしい
    評価:この意見は一理ある。部署間の給与差をもっとつけるべきでした。
  • 同業他社では○○ドン~○○ドンですので、私は○○ドンでお願いしたい
    評価:生の情報は実にありがたい。しかも、他社の給与レンジの下辺で提案してくるので、とても謙虚な子であることがよく分かります。
  • 今すぐではなく昇給時期で構いません。承認されたら、もっと頑張ります。
    評価:リーズナブルでありがたいです。

彼の提案を受けて、私は昔にあったことを思い出しました。当時私はある大手会計事務所で働いていました。ちょうど第2次ベトナム投資ブームだったので、業績がとてもよかったです。ある日突然オーナーから倍以上の昇給を言い渡され、嬉しかった半面、これでよいのだろうかと不安もありました。元のお給料も悪くなかったので、倍以上に昇給されるとマーケット的にも破格な水準になってしまうのが不安な気持ちの根源です。その後、妻とも相談して、自分の納得している給料でよいということで、オーナーさんに昇給率を下方修正してもらいました。今であれば躊躇なく昇給を受け入れ、もらった額に見合うパフォーマンスを出す努力をするかもしれませんが、当時では将来の価値ではなく現在価値で自己評価し、それを通しました。

一方で人事制度とは何のためだと思いますか?私は単純に成果を分かち合うためのロジックだと思っています。評価は基本的に相対比較ですが、その中で、自分の評価は社内で比較するのか?それとも社外で比較するのかが分かれます。社内(同僚)と比較して納得するか?、社外(友人)と比較して納得するかの違いです。私は後者(社外と比較)の方が建設的だと考えています。社内という閉じられた世界ではなく、広く社外から情報収集することにより、自分の価値を維持する点に関して企業も個人も成長させられるからです。

評価方法比較
項目 人事部主導評価制度 自己評価
目標設定 上司との面談を通じて設定する。自分や部署の過去のパフォーマンスに基づくことが多い。受動的になりがち。 能動的に情報収集して、目標設定する。発表資料は上司のためだけではなく、会社へのPRになる。
目標管理 上司により管理される。 基本的に自己管理、上司がフォローする。
給与設定 会社より会社のロジックで一方的に決定される。 自分のロジックで設定できる。
給与交渉 基本的にできない。 自分のロジックで折衝できる。

上記の表のとおり、自己評価の場合は断然社員の主体性を引き出せて、納得感は高いはずです。一点だけ懸念されるのは、社員の過大評価です。過大評価で破格な給与をもって折衝され、折り合わず退職、あるいは社員のモチベーション低下につながると非常に困るものです。

しかし、私は個人的に過大評価のリスクは高くないと思っています。というのもベトナム人はまず同年代の友人から情報収集して、その友人達の平均給与で考えるからです。また、ベトナム人はどちらかというと将来の能力より現在の能力で考えがちだからです。自分が確実に出せるパフォーマンスで給与提案する形になるはずです。

会社の人事制度で平均値的な考え方で社員の給与を決定するのは経営者にとって楽なやり方です。しかし、その弊害として社員の主体性を充分に引き出せない、そして、突出した優秀な社員ほど納得できず、定着してもらえないリスクがあります。社員それぞれに対して個別対応するのは面倒な作業ですが、結果として主体性を高められ、定着率も良くなります。弊社のような小さな企業では社員の定着および主体性は最も大事な要素ですので、社員の自己評価を大事に、個別対応していきたいと思っています。

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プロフィール
Nguyen Dinh Phuc
E-mail: nguyen.dinh.phuc@hrnavi.com
Tel: 097 869 8181

国費留学生として、選ばれ、1996年~2006年まで日本で留学と仕事を経験したのち、ベトナムに戻り、日系企業に対して、経営助言のコンサルティングをしました。ベトナム人は比較的にレベルが高くないという実態をなんとかしたく、2010年からアイグローカルリソースを創設、ベトナムにある人材のレベルアップを会社のミッションに、日々、努力しています。

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