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2018年7月18日

人材から人財への道のり
VOL 13::謝らない、感謝しない

以前、日本人ボスから教わったことわざがあります。日本人は「親しき仲にも、礼儀あり」、それに対して、ベトナム人は「親しき仲にも、礼儀なし」ではないかという。子供の頃、学校から戻ってきたら、年上全員に「ただいま!」、あるいは外で遊びに行く際には、家に訪問中のお客さんなどに対して「行ってきます!」と教わって、それなりに意識しているため、当時は「礼儀なし」と言われても、あまり納得できませんでした。その後、いろいろ考えると、ここでいう礼儀はお作法的なものではなく、相手に対する感謝の気持ちや、敬う気持ちだと理解するようになりました。当時、なかなか簡単にありがとう(Cảm ơn)やすみません(Xin lỗi)は言えなかった自分もあり、どうしたのかなと思いました。

そもそも、一般的なベトナム人の家庭ではお互いに対して、ありがとうやすみませんを使う習慣がありません。親が子供にご飯を食べさせるのは当たり前、だから、わざわざ親に対して、ありがとうを言わせない。一般的に宗教観も薄いので、食を与えてくれている神に対して、感謝する習慣もない。それから、子供が大好きなベトナム人の家庭では大事に育てる反面、少々の悪さがあっても、叱ったりしないし、謝らせない。その上、目上の人に対して、仮にその人が変だとしても、無条件に敬うことが強く要求される。そうやって、目上の人とますます遠い距離にあり、そう簡単に謝れなくなる。頭ごなしに怒られそうだからです。

一部のベトナム人では感謝したり、謝ったりしないのはお互いの距離感が近いから、少々お互いに迷惑をかけたり、恩を受けたりしてもとくに言葉に出して言う必要がないという人がいます。言葉にして、表現すると逆に水臭いと言われるという。確かにその部分があるのは事実ではあるものの、そうではないケースがある。お互いの距離感という一つの尺度で見てみることにします。

距離感 見られるベトナム人 日本人
遠い 感謝や謝罪の言葉をしないで、少々相手に対して我慢をする どんな時でも、ありがとう、すみませんという
親しい 感謝や謝罪の言葉が言いやすく、言える ありがとう、すみませんを意識して、いう
信頼し合える仲 感謝や謝罪の言葉をあえて、使う必要がない 口にしない、よく観察して、相手を喜ばせる行動で返す

上記のように整理すると、心の距離が遠いのと信頼し合える仲とでは同じく、黙って、何を言わないことになってしまうので、距離感を読みづらくなります。別の観点で見ると、ベトナム人は相手を信用しやすく、一回お酒を飲むぐらいで、いきなり信頼し合える仲になってしまうケースも少なくありません。時間をかけて、丁寧に距離感を縮める日本人男性が、ベトナム人女性の中では、行動力がないと不思議がっていることも理解できます笑。

この距離感に関して、弊社においても通じるところがありました。中間管理職がいなかった時代ではやはりスタッフとの距離感が遠いので、スタッフが緊張して、個人面談時でもなかなかありがとうやすみませんを発言するスタッフが少なかった。その後、少しずつ中管理職が育ち、スタッフにいろいろな指導してくれました。おかげで、普通にありがとうやすみませんが言えるようになりました。今になって、そういう礼儀を慣れてきた社員は自分たちの友人がなぜ、ありがとうを言わないのか?と疑問を持つようになるぐらいです。

感謝することや謝ることは当たり前のマナーだと思い込んで、スタッフに一方的に求めるのはお互いの距離を広げるだけであって、よくないはずです。また、親しい仲だから言わないと解釈するのも危険です。まず、トップが親身になって、社員に対して、ありがとうやすみませんを実践していく。そのうちにスタッフも慣れてきて、そうしてくれます。こころが通じ合う集団になったら、絶対勝つと信じます。

次回は「欲は抑えて、利益は主張する」について、考えたいと思います。

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プロフィール
Nguyen Dinh Phuc
E-mail: nguyen.dinh.phuc@hrnavi.com
Tel: 097 869 8181

国費留学生として、選ばれ、1996年~2006年まで日本で留学と仕事を経験したのち、ベトナムに戻り、日系企業に対して、経営助言のコンサルティングをしました。ベトナム人は比較的にレベルが高くないという実態をなんとかしたく、2010年からアイグローカルリソースを創設、ベトナムにある人材のレベルアップを会社のミッションに、日々、努力しています。