2025年10月15
仕事上、たまに海外、特に欧米系の同業他社と情報交換をすることがあります。その際、驚かされることがいろいろありますが、その一つは休暇取得の長さです。ある会社の幹部クラスのマネージャーが、ヨーロッパへ一カ月の旅行に出かけ、その間は電話やメールには一切触れなかった、という話が記憶に残っています。すごいなと思う一方で、弊社の勤勉さ、つまり私も含めてあまり休みを取らず、休んでも常に携帯でメールをチェックしたり電話対応をしたりする、その姿勢が美徳だと内心では思っていました。
日本では、仕事を天職と捉え、仕事を最優先する価値観が強く、勤勉さが美徳とされます。そのため、あまり休まず常に働くという文化が根付いているはずです。一方、欧米では仕事と私生活のオン・オフの切り替えが上手で、そのような行動パターンが一般的です。そうした文化の影響を受けた若いスタッフも、一生懸命働く一方で有給をあまり消化しないことがよくあります。経営者である私も、それを美徳と捉えたり、休暇を取るかどうかは個人の自己裁量だとしてあまり気に留めず、実質的に放置してしまっている現実があります。
そもそも日本は、ベトナムと比べて圧倒的に祝日が多い。ベトナムの祝日は年間で約11日(テトの3日間を含む)の一方、日本は年間で23〜25日もある。カレンダー上の祝日があれば強制的に休めるため、リフレッシュしやすい。いわゆる仕事人間が多い日本でも、休みがあることで適度にリフレッシュできる。一方で、ベトナムは休みが少ないため、長いあいだ緊張感に包まれた状態で働かざるを得ないことが考えられる。特に弊社のようなサービス業は、仕事の「終わり」が見えにくく、気になればいくらでも仕事がある(笑)。独身の社員で、趣味のコミュニティやプライベートの予定をあらかじめ組んでいないと、四六時中仕事ばかりしてしまいかねない。
非常に真面目で日本人的な気質を持ち、日系企業での就業経験があるスタッフほど、プライベートの時間を削ってでも仕事をしてしまいがちです。とくに独身でプライベートの時間を計画的に確保しない人ほど、仕事にどんどんのめり込んでいきます。十分なリフレッシュができないうえに、営業利益の追求が厳しい当社の人材紹介業では、次第に仕事の意味を見失いがちです。本来、私たちは人の職を扱い、人生に関わる大切なチャンスを支援するという、企業からも登録者からも感謝される素晴らしい仕事をしています。しかし、KPIや日々のトラブルに追われるうちに、その意義が少しずつ薄れ、「何のためにやっているのか」を週ごとに見失っていきます。結果としてモチベーションは下がる一方となり、最後には仕事が楽しくなくなってプレッシャーに押し潰され、すべてを投げ出して「しばらく休みたい、仕事をやめたい」という気持ちが強くなってしまいます。これはよくあることです。
仮に引き止めたとしても、すでにモチベーションが底をついているため、簡単には回復しません。長期休暇を取っていいと伝えても、真面目な性格ゆえに特別扱いされていることを恐縮して、結局は断ってしまいます。さらに、忙しくプレッシャーの大きい仕事でもあるため、一度リズムが崩れると、例えば一ヶ月そのリズムから外れるだけでも再スタートには膨大なエネルギーが必要になります。そう考えると、この案もあまり現実的ではないのかもしれません。
最も現実的なソリューションは、欧米企業のように休暇取得を義務化する制度を導入することです。やり方はいくつか考えられます。例えば、年間12日の有給休暇に加え、勤続1年ごとにさらに1日を付与するなど、福利厚生としてのインセンティブを設ける方法があります。また、部署ごとに休暇取得の実績を集計し、公正に順番で交代しながら休むローテーション計画を提出させるのも有効です。休暇期間中はメールのパスワードを一時的に変更するなどして、本人を業務から切り離し、状況を適切に管理します。
あわせて、部署内で業務の貸し借りができる体制を整え、誰かが休むときは他のメンバーや上長がカバーします。その代わり、休暇から戻ったらお土産や旅の話を共有したり、簡単な打ち上げを開いたりして感謝を可視化します。これを積み重ねて会社の文化として定着させれば、部署内のコミュニケーションが活性化し、旅行に出られなかったメンバーも休暇を取ったメンバーのリフレッシュしたエネルギーを共有できます。互いに影響し合い、助け合う組織へと育っていきます。
企業経営におけるもう一つのプラス面として、業務のブラックボックス化を防ぎ、後継者育成や業務継続のシミュレーションができる点が挙げられます。特定の人が長期にわたり同じ仕事を担当すると、その人にしか分からないやり方やプロセス、社内外の連絡経路が固定化し、場合によっては不正の温床になりかねません。有給休暇の取得を徹底すれば、その間は必然的に他の人が業務を引き継ぐことになり、ブラックボックス化されたやり方が可視化・共有されます。その過程で、無駄な作業の発見や、より良い方法の提案など、第三者の視点による改善効果が期待できます。また、他の人が業務を遂行しやすいよう事前にマニュアルを整備すれば、それ自体が業務の棚卸しとなります。仮に担当者が離職しても、あらかじめ棚卸しと共有が行われていれば、誰でもカバーでき、大きな問題を起こさずにスムーズな引継ぎが可能になります。
結論として、社員が真面目に働き続けてくれることをただ喜ぶだけでは不十分で、むしろ大きな間違いになり得ます。計画的・強制的に休暇を取得させることで、残るメンバーには多少の負担が生じますが、脳のリフレッシュにつながり、思いやりのある風土が育ちます。休暇から戻った人がフォローしてくれた同僚に感謝を伝えることで、人間味のある温かい組織づくりにも寄与します。さらに、定期的な休暇は引き継ぎの詰めや事前シミュレーションの実践機会となり、突発的な欠員や緊急事態への耐性も高まります。こうしたプラス面はネガティブ面を圧倒的に上回ります。皆さんの会社でこのような制度をまだ導入していないのであれば、ぜひご検討ください。
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国費留学生として、選ばれ、1996年~2006年まで日本で留学と仕事を経験したのち、ベトナムに戻り、日系企業に対して、経営助言のコンサルティングをしました。ベトナム人は比較的にレベルが高くないという実態をなんとかしたく、2010年からアイグローカルリソースを創設、ベトナムにある人材のレベルアップを会社のミッションに、日々、努力しています。
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