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2017年9月13日

輝く日本人
Vol 3::Sun Red River 能塚さん

氏名:能塚 洋一さん
会社名:Sun Red River Co., Ltd.
役職:General Director

取材後、社内ミーティングルームにて
すごく親切な方。ハノイ歴22年の大ベテランです。

同社独自で運営するビジネスセンター(SUN RED RIVER2階)
ここに日系企業が複数社入居されています。

SUN RED RIVER建物外観
築18年とは思えないキレイな外観です。
入居率は平均90%を維持。人気物件です。

同ビル2階テナント「東京レッドグリル」能塚さん友人が経営する飲食店
宴会、打ち上げなどにもよく使用されている人気店。
料理の味は絶品です!! 能塚さんも経営に協力している。
メニューは能塚さんも入り共同開発しているとか。

嶋村:本日はどうぞよろしくお願いします。では自己紹介をお願いします。

能塚さん:能塚です。サンレッドリバー代表を務めています。会社はビルオーナー兼管理運営業務を主体としてハノイで約18年事業を行ってます。その中でも私の仕事は入居者向けの対外的な仕事、テナントさんからの依頼があればすぐ出向き対応するなど社長業だけでなく営業の仕事もしています。

嶋村:ベトナムに来られてどのくらいになるんですか。きっかけは何だったんですか。

能塚さん:今年で22年になります。1995年頃に日本で第一次ベトナム投資ブームが起きて、当時働いていた会社がベトナムに不動産建設を計画し、まずはライセンス取得のため現地調査かねてベトナムに派遣されたことがきっかけです。その案件が現在のサンレッドリバーでした。同年にライセンス取得、1996年に建築を開始し、1999年にオープンし現在築18年目を迎えています。

嶋村:1995年のハノイ・・・想像もつきません。当時どのような状況だったんですか。こちらに初めて来られてから苦労されたことも多かったのでは?

能塚さん:もちろん悩みましたよ。生活面では、その当時は現在のようなハノイに日本人がたくさんいるわけもなく、たったの500人程度、ベトナムに進出する日系企業は三井物産、豊田、ホンダなど有名な大手企業だけでした。ハノイ市内で日本食レストラン3件しかなく、スーパーマーケットもなし、食材など買い物をする場所は市場だけと厳しい環境でした。

日本のことについて情報収集したくても、当時はネット普及していないこともちろん、スマホもなければ、娯楽についてもテレビで民放なくNHKだけ。唯一、情報収集できるツールは新聞だけでした。それも友人が日本より持参してくれたもの、帰国時にまとめて買ってきたものなど。とりあえず時代遅れにならないように必死に新聞また広告を貪るようにして読んでいた記憶があります。

ほか生活面では停電が頻繁にあり、インフラもまったく整備されていないような状況でしたね。あと、現在みたいに旅行者向け安宿があったり、廉価なレジデンスなど一切なく、ハノイ市内でホテル一泊の平均価格は120~150ドルくらい、レジデンスに住もうものなら7000ドルくらい用意しないと契約できなかったものです。

困ったことは数えきれないほど多かったですが、日本人コミュニティもあり、皆で協力しあいながらなんとか生活していましたね。当時は大変でしたが、今思い返したらとても良い経験です。

嶋村:現在でもこちらに来られる日本人の方は食に関する悩みが特に多いみたいです。ちなみに仕事面ではどうでしたか?

能塚さん:私が来た1995年は駐在員としての訪越でした。当初、日本人と絡むことが多かったですが、日がたつにつれてベトナム人と接する機会が増えてコミュニケーションや考え方の違いに戸惑うことが出てきました。本当の悩みでいえば、現在のポジションに就任された2004年以降ですかね。社長業を任されて初めてベトナム人との接し方を深く考えるようになりました。それは教育という問題です。

例えば、ベトナム人との感覚のちがいを挙げます。日本人の感覚で悪いと思って注意叱責することでもベトナム人にしてみればなぜ注意されているか、また、怒られているかがわからない方が多いです。日本の当たり前をそのまま持ち込んで強制してもダメということを数々の経験から学びました。彼、彼女たちの持っている感覚をわかってあげ(歩みよる)、うまく付き合うようにコントロールしてあげる必要があります。ただの考えの押し付けは嫌がられる一番の原因になります。

またホーチミン事情はわかりませんが、ベトナムハノイの北部の人は良くも悪くも嘘がつけない性格。現在では考えられませんが「今日はしんどいから帰ります(特段の理由もなく)!!」ということもありましたよ笑 その時はどうしていいものか私もすごく戸惑いました。

嶋村:たしかに感覚だけをとっても日本人とベトナム人では全然ちがいますね。私も従業員との間で議論したり、意見がぶつかった場合など、必ずといっていいほどそういう場面に出くわします。能塚さんの長年の経験から、ベトナム人と仕事上でうまく付き合うためのアドバイスをいただけませんか。

能塚さん:まずは一人ひとりと信頼関係を築くということが重要です。ベトナムでの現地スタッフの労務管理がキーワードとなっていることは昔も現在も同じです。人種がちがうので当然のことですが、こちらに来られる日本人の方は「日本での当たり前をベトナムで当たり前と思わない」という意識をもって仕事をすることが成功の近道でしょう。もちろん教育によって考え方、理念を植え付けることは問題ないですが、できて当然でしょう。という考えでは双方の距離が疎遠になっていくだけ。100%の日本式教育は無理です。ですので、バランスを考えベトナム人の考え方を尊重してあげながらこちらの考えを教えていく。

そして、従業員に注意叱責することも時には大事で、ずっと優しい社長、上司ではダメなんです。これにも諸説ありますが、ここぞというときに見せる!ということを私は自身の失敗からも学びました。ただし、怒るのはあくまで全体に向かってで、個人に向けて、特に大勢の前で注意批判をすることはご法度です。ベトナム人の場合、人前で注意されることを嫌います。個々のプライドは高く、人前で恥をかくことを嫌う。日本人みたいに何が何でも耐えるみたいな精神論はききません。どうしても個人に注意したいのであれば、個室などに呼び伝えてあげること、そして次にどうするべきか明確に指示して改善を求めることが良いです。私の場合、社内全体の雰囲気を引き締めるという意味で社員みんなに向けて注意しています。もちろん社長としての威厳を保つという意味もありますが。社長、上司が個人に特定せず、何かに対して怒っているとなればみんな反省して仕事の意識が変わるなんてこともあるんですよ。また、日本式教育の場合、特に企業だとアメとムチでいえばアメ3割/ムチ7割が平均ではないでしょうか。しかし、ベトナムではその逆をお勧めします。従業員をほめて伸ばすことに重点を置く。その方が教育として長続きします。

嶋村:教育はほんと難しいです。自分から意識を変えて周囲に適切に伝えてあげることが重要なんですね。人材の会社をしていると離職率という言葉がこの国では顕著です。以前、能塚さんから御社社員さんはほとんどの方が長く勤められていると聞きました。従業員の方が仕事を長く続けるための秘訣ってあるんですか。

能塚さん:弊社の従業員は勤続年数が15年以上のベテラン社員が9割と定着率が非常に高いです。理由をきくと居心地が良い職場環境、適度な仕事量、会社イベントが楽しいなど。一つアドバイス言うとするなら楽しみを共有してあげることですかね。ベトナム人の方は旅行が大好き。過去に会社の社員旅行を開催した際、みんなの気合がすごくてとても驚きました。日本でいう社員旅行は控えめなイメージがあります。こっちは社員全員が出し物やイベント、チームビルディングなど個々が主体となって考え行動する、しかも仕事以上に本気で楽しみます(笑)なかなかできないことですよ。顔を見ても本気で楽しんでいるのが見て取れます。このみんなの楽しみ喜びを一緒になって共感してあげる、また一緒に輪に入って盛り上げてあげることが重要と認識しています。成功談としては現職に就任した初年度に社員総勢100名以上をタイに連れていったことです。当時では日系企業もまだ社員旅行が定着しておらず、みんな海外旅行の経験が一度もない方が多く、従業員たくさんの方たちから感謝の言葉が一斉に寄せられたのを覚えています。それからは毎年社員旅行に行くようにしています。

嶋村:キーワードは「楽しみ」ですね。私の会社ももっと取り入れていきたいと思います。ちなみに能塚さん今後のキャリアなどはお考えですか?あれば教えてください。

能塚さん:ここにきてようやく本業が安定してきたので、次のステップを検討しているところです。現在、親会社が当地にて健康食品の販売促進を行っています。その販売PRを手伝って事業を軌道に乗せることが直近の大きな目標ですかね。ベトナムは現在成長しており、若い方を中心としてネットなどで健康食品ブームがきています。特に日本の製品にも関心・人気が高く、とても魅力的みたいです。日本製化粧品など売れ行きが良すぎて空港など免税店でベトナム人の購入需要も年々増加しています。ただし、売るためにはいろいろな壁が立ちふさがります。例えば、現地に商品を仕入するには輸入ライセンスが必要です。ライセンス取得するために書類準備はもちろん、法律など勉強しなくてはいけません。事業始めてから知りませんでした。では話になりませんからね。この国ではそのトラブルが一番多いような気がします。

嶋村:新しい挑戦でこれから楽しみです。私も応援しています。最後にこれからベトナムにくる日本人に向けてメッセージをお願いします。

能塚さん:私は34歳の時にベトナムに来ました。今ではもっと早くに来ておけば良かったと後悔することもあります。最近では20代でベトナムにくる若者たちが増えてますよね。周りからいろいろな意見を聞くこともありますが、とにかく一回まず海外ベトナムを見ることは良いことで、現地では日本にないようなビジネスチャンスがたくさんあります。日本とまた違う世界を目で見たり肌で感じたり、その経験をベースに成長できることは必ず自分の大きな財産になるでしょう。情報社会ですが、ただ情報収集だけでとどまらず実際に現地にきてベトナムという国がどんな世界かを確かめる。それでもどうしても日本に帰って働きたいと思うのであれば、その経験を持って帰れば良いだけ。日本での余生それからでも遅くないような気がします。経験値はなにより大事で、ここベトナムで得た経験はマイナスにはきっとならないでしょう。日本で経験できない成功、失敗をベトナムでは経験できる、これは大きなメリットです。

嶋村:本日はどうもありがとうございました。

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インタビュアー
ハノイ支店マネジャー 嶋村 拓史(しまむら・たくじ)
E-mail: takuji.shimamura@hrnavi.com
Tel: 090 1828 660

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